ストーリーが作る地域創成

地域創生では、官のみが熱を上げても失敗することはよく言われている。

その担い手となる人や組織が重要となることは明白だが、自分たち以外の自治体は一体どうやって担い手に「やる気」を持たせているのか、担当者なら誰しも興味を持っている課題だ。

目次

現代版 灯台守プロジェクト

現代版 灯台守とは、愛知県美浜町が実施している地域創生プロジェクトで、同町に所在している野間埼灯台の活用を公募で集める人に担ってもらう。というものだ。

灯台

募集サイトによると

野間埼灯台ポータル化実行委員会が全面的にサポートの元、地域住民や関係団体、行政等と連携・協力し、下記の活動、また自ら考えて事業を起こすことを行ってもらいます。ひとりもしくは2人以上で活動。

業務内容として、野間埼灯台ポータル化実行委員会が募集時に提示した活動メニューに基づき、

各所と協力しながら6ヶ月間活動します。

自ら考え、行動し、野間埼灯台を中心とした新しい事業を作り出す。

野間埼灯台ポータル化実行委員会が活動をサポートします。

とある。

なお同プロジェクトはすでに当選者が出ており愛知県に在住するカメラマンの男性とそのパートナーである女性のカップルが灯台守として活動を開始している。

ここで重要なことは「自分たち(行政)以外が担い手となっている」ことと「それを元にしたストーリー性」だ。

この灯台は別に経営難ではない。観光地としては小規模であり、町自体もこの灯台の有無で経済がひっくり返るようなことはなく、言ってしまえば最重要施設や施策ではない。

管理も別に行政担当者が行ったり、地元に委託すればよい話である。

だが、町はこの灯台を舞台にストーリー性を持たせ、夢もあるプロジェクトとして実施している。

わざわざ募集や選考、外部の人に対して地元との融和やサポートなど手間暇かける意味は何か。

合理性だけが全てではない

もし行政担当者が灯台守として就任し、より大きな費用を投入しても盛り上がりに欠けることは想像に難くない。

このプロジェクトは「外部の人をボランティアとして何かの仕事をさせたい」「全部業務を丸投げしたい」などの地元住民・行政ファーストの内容ではなく、しっかりサポートがありつつ自発性に任せ、また活動費用も出る。

かと言って「住居をタダで貸し出すあるいは提供する」「多額の権利や金銭を提示する」など、担い手に対してお得さを売りに出しているわけでもない。

その結果、やる気があり、この町ではなくこの町と今回のメインである灯台に関連する人物が名乗りを上げ、内定した。この方以外にも数十組からの応募があったという。

灯台守たちにやる気があり、町の住人たちの期待も高まっているのは、彼らが外部のボランティアだとか、金銭や権利を目的とした来訪ではなく、現代版灯台守というストーリー性があり共感を呼んでいるからに他ならない。

このプロジェクトは客観的に見れば、大規模な開発や資金投入もしておらず、わずか2人に灯台を任せただけだ。

しかし、ハコモノの整備や大規模なボランティア募集では実現できない魅力発信に成功している。

この募集要項には

『5、あなた独自の新規事業の立ち上げ

上記以外にあなたが灯台や美浜町でやりたいことがあれば応援します!』

という項目がある。

ただの仕事の担い手の募集ではなく、この灯台を活用し、自発的に何か事業をしたいという「野心」や「夢」も応援する姿勢がやる気のある人を呼び込む原動力になっているかもしれない。

野間埼灯台ホームページ
(引用元:野間埼灯台ポータル化プロジェクト

行政担当者は限られた予算の中で、住民の生活を維持しなければならない。

そのためには効率化・合理化が不可欠である。

一方で完全な合理化はチャンスを逃す可能性もある。

観光や町おこしなどの振興を担う担当者は特に、予算が限られているからこそ発想や柔軟性を持たせることは大事になる時代だろう。

もちろん計画実施には責任が伴い、行政担当者としては責任を担うメリットがあまりないとか、現状維持とミスがないことの方が成績に反映される場合は多くあるかもしれない。

しかし、頭の中で考えてみるだけなら少なくとも予算は掛からない。

こうした身近なところに大きな転機があるかもしれない。

1人目:仙敷裕也(せんしき・ゆうや)35歳。

愛知県東海市出身。職業カメラマン。2年ほど前から野間埼灯台でのウェディングフォト撮影を年間120日以上行い、地元住民とも既に溶け込んでおり、カメラマンとして飛躍するきっかけとなった美浜町に恩返ししたいという応募動機が決め手となりました。

2人目:佐々木美佳(ささき・みか)25歳。

静岡県磐田市出身。キッチンカーでの開業を目標に勉強を始めていたところ、パートナーの仙敷さんから当プロジェクトを聞き、自身も「これしかない!」と快諾し共に応募。プロジェクト終了後も美浜町に住み続け、地域を照らす活動がしたいとの思いが決め手となりました。

以下、参考文献
海と日本プロジェクト広報事務局.名古屋のカップルが美浜町に移住し町おこし隊として始動!閉校予定の小学校×野間埼灯台で、白い“灯台ポスト”を制作します.PRTIMES.2023-12-05.(参照日:2024-01-10)
野間埼灯台.公式WEBトップページ.野間埼灯台.不明(参照日:2024-01-10)


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