地域公共交通の衰退に歯止めをかける方策とは?

自治体向け情報_地方公共交通
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八方ふさがりな地方交通

日本の自治体はアメリカのように極端に自己責任を求めない。

1人でも住んでいれば、その土地に対して数億円をかけても除雪・インフラ管理、そして公共交通が利用できるような措置を取ろうとする。

しかし、現実問題として日本国民全員に平等に公共交通を提供することは不可能と言える。

無い袖は振れない。ということで鉄道はおろかバスやタクシーも存在できないエリアは非常に多く存在している。

さらに高齢化率が高かったり、地元意識が高い方を中心に引っ越しや集住の依頼も掛けにくく、自治体にとっては大きな問題になっている場合もある。

このような交通空白地帯と言われる問題は日本の多くの町に存在し、東京都にすら存在している。

マイカーと建前

日本の自治体はどんなにお金がなくても、公共交通をすべての住民に対して提供することを使命としている。

一方で使命とは裏腹に自治体が展開する公共交通は利用されていないこともある。なぜなら利便性がないことと、マイカーを使うことが前提の生活が最初から作られているためだ。

その結果「空気を運ぶバス」と揶揄される自治体運営のバスが多数生まれていく。
交通事業者は補助金(税金)に頼るため、赤字に対する危機感も薄い。空気を運ぶバスさえ運行していれば、事業者も収入になるため反対を言う理由はない。

こうした自治体では、マイカーを持てない若年層や観光客は定着できず、観光をはじめとした産業が衰退し、結果的に日本の地方自治体の多くは関係人口の喪失=税金収入の喪失に直面していく。

自治体運行バスの問題

1.なぜ自治体運営バスは空気運搬車になってしまうのか。

それは、運営費がないことから路線を最小限に絞るためだ。1日あたりの最小路線は1日1便1路線となる。現実的に1日1便ということはあまりないとしても、多くの自治体で1日数本運行のみというものは見受けられる。

そこに主要な役所や公共施設、病院をすべて網羅するとどうなるかというと、徒歩10分の範囲の建物に行くためにも、1周するのに1時間以上掛かる不便さに加え、運行時間が限られるので乗るための難易度が跳ね上がる。

かといって、都心のように路線を充実させるのはコストの観点から現実的ではない。
結果、住民へのアピールのためだけに設置される自治体運営の空気運搬バスが成立してしまう。

2.空気運搬車をなくすにはどうすればいいのか

空気運搬車が生まれる原因は「とりあえず何かしないとならない」という自治体側の焦りと丸投げ精神、「とりあえず何とかなっている」という事業者側の危機感の無さから起こっている。その結果「とりあえず走らせるバス」が誕生するのだ。

この「とりあえず」をなくし、より効果的な施策を実現するには、その自治体ごとの問題を洗い出し、何が必要であるかを知ることが重要だ。隣がやっているから、隣で成功しているからと安易に導入するのは危険と言える。

1.オンデマンド交通

需要に合わせた交通サービス。ユーザー側が乗車・降車地点をある程度選べる半タクシー的な利用ができるのが特徴だ。ユーザーは路線に沿わず寄り道が少なく移動でき、事業者としても呼ばれてから行動するため、利用者が少なくても、利便性を損なわずかつ小型なクルマや小規模なシステムで運用できる。

2.ハブアンドスポーク

ある程度の大きい人口を持つものの面積も大きい自治体などで特に有効。交通結節点という各路線やコミュニティバスなどのすべての交通手段の中央発着場を作り、それぞれの方面へ少ない停車場を設定する。遠方にはシャトルバスなどを走らせるなどして、短い距離なのに1周で1時間と掛かるような停車場が多すぎるコミュニティバスの問題を解決できる。

3.ライドシェア

そもそも公共交通事業者がいないような土地では、住民同士の助け合いとして、交通事業者ではない個人がタクシーのような活動をすることができる。いわゆるライドシェアというもので、一般的には禁止されているものの、交通事業者がないような特定の地域限定で解禁されている。

自治体の本音 コミュニティバスすら難しくなる自治体の例

同じ自治体でも、例えば東京23区の区役所と人口が少ない自治体の役場では、まるで別の国と言わんばかりに台所事情が異なる。

人口が少ない自治体は経済成長が期待できる組織ではないため、何かしらの新施策がないと衰退する一方だが、新しい施策を行うのは税収に余裕がある大都市自治体でないとなかなか難しい。自治体の担当者らに聞くとどうだろうか。

1.収支バランス

毎年、人口流出や労働人口の減少により悪化する税収の中、固定費だけで大きな割合を占め、毎年余裕がある予算でもないため基本的に新しいことにチャレンジしない。さらにチャレンジするだけの人員もいないため、無料であっても諸手続きを行うことすら煩わしさから取り入れないことも。特別な交付金が無い限り、自治体が抜本的に問題解決できる投資をすることは難しい。

2.交通へのプライオリティの低さ

自治体は住民の足を優先的に考えている。と建前では言っていても実際は無いに等しい状態で、今のところなんとかなっている(住民が自主的になんとかしている)ため、最重要インフラの維持管理を優先し、結果的に公共交通へのプライオリティが低くなる。公共交通を整備することは後回しになりがち。

3.最重要は電気と道路と防災

人口が多い自治体では、教育、防災、防犯を中心に多くの施策にバランスよく投資を行っていることがあるが、過疎自治体ではより人命に直結する防災などに関する予算を比較的優先せざるを得ない。地方に行けば行くほど、人口が少ないため縮小やコストカットあるいは最低限の維持のみ行われ、利便性向上のための試みは後回しになる。

場所によっては水道やガスなどの基礎インフラも民間に委託せざるを得ない場合も多く、水道は都市部では水道管が引かれているが、地方では井戸やくみ上げ水の集中管理、あるいは民間へ管理を任せている場合も。ガスもガスパイプラインではなくプロパンガス等で賄う地域も少なくない。こうした場所では公共交通の充実など眼中にない。

こうして維持管理だけがやっとで、公共交通の利便性の向上などは、二の次に。

コミュニティバスのような税金投入すら難しくなる地域では、デマンド型交通などを導入する例もあるものの、それもやはり交通事業者と税金が必要な話であり、それらも導入できない地域も少なくない。

こうした町では、予算を掛けず交通の担い手となってくれる存在を求めているものの、そのような都合がいい存在はなく、やはりほとんどの地でマイカーに頼らざるを得ない状況になっている。

交通問題はソフトではなくハードの問題で、資金や設備が必要になるため、敷居が高く後回しになりがちだ。

対応策

国交省では地域交通は重要としながらも、現実的には地域・地方が自助努力でどうにかすることを期待している。

まずは自治体が持つ資産を有効活用するしかなく、すでにコミュニティバスを走らせている自治体なら地域公共交通会議が設置されているはずだ。

この会議は地域交通の担い手が一堂に会する場でもあり、ほとんどの場合は事前に取り決められた内容を確認する会議となりがちだが、メンバーとの繋がりができることも確かだ。

打てる手は多くないとはいえ、ヒアリングをすることはできるかもしれない。

いかがでしたでしょうか。
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