大都市や地方都市のみならず、人口10万人未満の市町村でも海外旅行客が訪れる時代になった。
「人口が10万人未満の市町村」は日本全体で8割を占めている。さらに、4割の市町村が人口2万人未満である。これらの人口の少ない市町村が大半を占めていることから「どうせ少ないから外国人対策はいらない」とはいかなくなっている。
自治体共通の課題
インバウンド集客を行うためには、インバウンドに関する意識を高めると同時に、地元の受け入れ体制の整備が求められる。
受入初期には行政が主体となり、体制整備を行うことが多いかもしれないが、地元住民の参加も必要となってくる。地域の経済効果を上げるためには、民間の協力が欠かせない。
ところが住民との連携がしっかりなされていない自治体も多い。株式会社ダン計画が近畿経済産業局から委任され2020年にDMO関係団体に向けて実施したアンケートによると、「地域の認知が不足している」の項目において全DMO が「非常に課題」「課題」と回答している。
持続可能なインバウンドを実現するためには、ブランド力、ソリューション、広域周遊という3つの視点が重要である。加えて、ポストコロナ禍においては、安全・安心、安堵が重要な視点として加わる必要もある。
特に安全・安心、安堵といった部分を外国人目線で立てるかどうかは、小さな自治体に関わらず、他の大きな自治体でも課題点として挙げられている。
外国人旅行者の不便・不満として多く挙げられるのが、「無料無線LAN(Wi-Fi)環境」や「両替やクレジットカード、QRコード決済の利用環境」などだ。
実際にアンケートでは「キャッシュレス決済などに対応できていない」「多言語対応ができていない」と全府県が回答をしている。
SNSの活用
SNSは情報取得手段として若者ほど通常のWebページより重視しているというデータがある。しかしなかなか、その担い手を確保するのが難しい状態だ。アンケートでも「地域情報の発信が不足している」は8割超にのぼる 。
(参考文献リンク参照)
新型コロナ感染拡大以前から旅行形態は、団体旅行(パッケージツアー)から個人旅行(FIT:Foreign Independent Tour)へとシフトしてきており、海外の旅行エージェントへの観光地案内や企画旅行を提案する誘客活動に関しても、インターネットやSNSを活用した個人向けのアプローチへと変化している。
インバウンド客との接点を活用したプロモーションは、地域DMOや地域連携DMOでまだあまり採用がされていないのが現状だ。
特にリーダーシップを発揮し、先導する人材が不足している。また、自治体の規模によっては導入にあたっての財源にも課題があり、障壁の1つとなっている
これと連動してオウンドメディアでの予約システムの導入や、地域事業者が保有する予約データとの連携によるデジタルマーケティング、データの連携・統合を可能にするトラベルテックを導入するために必要な資金や人材の確保ができていない状況にある。
実際に、活動資金の大半は自治体の負担金に頼っており、自主的な財源の確保が急務である。
また、とても魅力的な観光地であっても、主要な鉄道幹線からのアクセスが不便なことが多いため、多くの観光客がたどり着きにくくなっている。
さらに、バスやタクシーなどの二次交通手段においても、インバウンド観光客への対応がまだまだ不十分で、現在の交通網を活用した取り組みはあるものの、地域ごとの連携に対する温度差や利害関係の調整が課題となっている。 特に外国人観光客が非常に少ない地域は、行政においても市民においても、インバウンドへの意識が低い傾向があることがわかった。
過去の成功体験から抜けられない例
温泉や観光地では、1980年代から90年代にかけて旺盛な団体旅行需要に対応する形で宿泊施設の大型化が進んだ。
最近では、宿泊施設の客室予約はインターネット経由の予約割合が急速に拡大傾向しているものの、整備が進んでおらず、インターネット対応に遅れが出ているのが実状だ。
(引用元:変革が求められる中小温泉旅館-日本公庫総研レポート No.2020-1)
日本制作金融公庫 総合研究所が発表してるレポートでは、「自社ホームページの開設」は、78.0%とおおむね取り組みが進んでいる。一方で「情報検索サイトへの登録」は66.5%と割合としては多くない。
一方で外国人や若者など、取り込んでいきたいターゲットはその逆にSNSやアプリなどの利用が最も多く、続いて情報サイトなど、最後に自社Webという利用状況であるため、ちょっとした対策ひとつで大きく化ける可能性もある。
インバウンドの観光客はまず情報取得をオンラインや自国に対応したSNS、ミニアプリ等で得ることが一般的であるため、インターネット部分の取り組みが少ないと、外国人観光客を取り込むのは難しいだろう。
観光施設を作るなどのハードの面は、時間やコストからすぐには実施できないことも多いが、アカウントの設置と運用など、ソフトの面は比較的取り組みやすい。
効果があるかどうか分からないから実施しない。ではなく一度実施して効果を測定するという攻めの姿勢も時には必要かもしれない。
以下、参考文献
・国土交通省観光庁.インバウンドを見据えた着地型観光調査(平成 26 年度).2015-03.(参照日:2023-12-08)
・近畿経済産業局/株式会社ダン計画研究所.令和2年度インバウンド需要の回復を見据えた支援方策の検討調査事業報告書.2021-03.(参照日:2023-12-08)
・観光庁.政策について地域づくり法人DMOとは?.観光庁.作成日不明:更新日2023-09-26.(参照日:2023-12-08)
・日本政策金融公庫総合研究所 佐々木 真佑.変革が求められる中小温泉旅館 日本公庫総研レポート No2020-1..2020-01.(参照日:2023-12-08)
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