ふるさと納税を教育に活用した鹿嶋市

ふるさと納税額のほとんどはポータルサイトによるもので、納税者も自治体ではなく品物を検索しているのが実情だ。

しかし最近では品物ありきではなく、「自治体に共感して寄付をした」など、その自治体が好きだとかストーリーが良いという理由で寄付を行う人も出ている。
これらは単に寄付額を得るのではなく、ふるさと納税を通して関係人口の創出や自治体のファンの獲得も可能になる。
さらには「未来への投資」としても使える可能性がある。

今回は地元の中学生が授業の一環としてふるさと納税のアイデアを開発している茨城県鹿嶋市教育委員会の担当者にお話を伺った。

目次

ふるさと納税に新しいアイデアを

茨城県鹿嶋市はピーマンを中心とした農産物が有名で、他にも歴史豊かな鹿島神宮のほか、プロサッカーチームや大規模な工業地帯も有する茨城県東部沿岸部の自治体だ。コンテンツは多い一方、東京に近いという理由もあり他の自治体同様に若年層の流出に悩んでいる。

そんな鹿嶋市教育委員会に地元の中学校から一本の電話が鳴ったのは2023年4月のことだった。
「総合的な学習の授業でふるさと納税の返礼品を開発してみたい」
それは地元中学校からの相談だった。

「総合的な学習の時間」のつかいかた

日本の中学校には「総合的な学習の時間」のカリキュラムがある。
これは学校ごとに内容をある程度自由に決めることができ、様々な活用がなされている。

相談してきた中学校では、これまで地域の歴史や産業を学ぶ時間に充てていたが、小学校でも同様の授業があり、内容が重複してしまうことがあったという。ふるさと納税の返礼品開発を授業で行えば、実際の品を開発することを通じて地元理解のみならず自主性も高められるのではないか。

市でもふるさと納税の強化プロジェクトが動いていたこともあり、案は採用され、自治体側のバックアップのもと2023年度の1年間を通して返礼品開発が始まった。

参加した生徒は中学1年生169人。15個のチームに分かれ、返礼品の取材、検討、企画を行い、年度中間で70に及ぶ地元の関連事業者に向けて参加を募り、プレゼン会も行った。

最終報告会以降(2024年2月15日)、地元事業者が案を採用すれば晴れて返礼品としてラインナップに加わるという企画だ。

地元を知る、理解する新しい学習カリキュラム

このプロジェクトは返礼品開発のみが目的ではなかった。

地元の中学生らは、このプロジェクトに積極的に参加した。
中には夏休み期間中に自主的に集まってフィールドワークや取材を試みたグループすらあった。
在校していない時でもクロームブックを通じて連絡を取り合い、情報や資料を共有して足りない情報をさらに調べにいく。彼らはまるで自分で会社を経営しているかのごとく行動したという。
明らかに、今までの学習とは違った。

プレゼン資料も凝りに凝っており、実際に関係者に伺ったり関係する場所に取材に行ったりするなどして熱心な紹介がなされている。本気で地元について自主的に調べて返礼品開発を行ったことで、通常の社会科などでの学習よりも高い郷土愛を獲得する効果も期待される。

大学に進学する場合、多くが地元から出ていかざるを得ない環境で、市内に仕事はあるものの、進学した多くが戻らず東京等に住んでしまうという悩みは、鹿嶋市のみの話ではないだろう。
一方で郷土教育を行うとしても、子どもたちからすれば、面倒な宿題の押しつけあるいは単に社会科の授業のひとつとしてしか捉えてくれないことはよくあることだ。

地元との繋がりを維持し、深めるという課題に対し「やらされている学習では愛着は沸かない」と市担当者はいう。

ふるさと納税の返礼品を、地元の中学生が考案して提案する。というものは生徒の自主性の向上、そして将来の自治体のファンとなる可能性も秘めている。
仮にIターンとならずとも、地元に高い知見がある者が日本各地にいることは大きなアドバンテージになるだろう。

ふるさと納税と〇〇な取り組み

こうしたふるさと納税と他の施策の組み合わせは、単に返礼品がポータルサイトに載り、寄付が上がること以外に大きなプラスを作り出せる可能性がある。

鹿嶋市では、昨年にふるさと納税戦略室が設置されるなど、近年は特にふるさと納税の強化を行っている。
中学校授業の連携のみならず、地元産品の強化なども同時に行われている。

以下、ご協力いただいた自治体さまHP/情報
鹿嶋市ホームページ
広報かしま


いかがでしたでしょうか。
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